長浜市(市民協働部 歴史遺産課)では、国友藤兵衛(一貫斎)家の資料調査を、文化庁「地域活性化のための特色ある文化財調査・活用事業」補助金の交付を受け、令和元年度と令和2年度の2ヶ年にわたり行ないました。以下にその概要をお知らせします。
国友一貫斎については、平成13年から平成17年に行なわれた文部科学省特定領域研究「江戸のものづくり」や、平成15年に行なわれた市立長浜城歴史博物館 特別展『江戸時代の科学技術-国友一貫斎から広がる世界-』で評価が行なわれてきました。その結果、日本の近世科学技術史における天文学や銃砲史の分野で、大きな業績を残したことが確認されています。
ただ、一貫斎家に残った資料については、これまで限定した調査しか行なえず、十分な把握がなされて来ませんでした。そこで、文化庁の補助事業として、長浜市では国友藤兵衛(一貫斎)家に残る資料について再調査を行ない、その総体を把握すると共に、新たな資料の発掘を行ない、かつ良好な保存環境の確立を目指すものです。
国友藤兵衛家(一貫斎家)の資料調査の過程で、これまで1枚の全体図面しか知られていなかった「阿鼻機流 大鳥秘術」の詳細図面が、新たに発見されました。「阿鼻機流 大鳥秘術」は、一貫斎が作成した飛行機の図面で、江戸時代には他の誰も飛行機図面を作成した例はなかったと見られ、一貫斎の発明意欲を示すものとして高く評価されてきました。
新たに見つかった資料は、縦24.3センチ、横16.8センチの冊子の形態で、5丁にわたり「阿鼻機流 大鳥秘術」と名付けられた飛行機について、パーツごとの詳細図面が掲載されて、檜板やなめし皮などの材料も記載されています。この図面から、一貫斎が飛行機を実際に製作しようとしていた事実がうかがわれます。また、日本近世科学技術史にとっても、現存唯一の飛行機図面として貴重な資料と言えるでしょう。
今回の資料調査において、国友藤兵衛家(一貫斎家)の所蔵にかかる古文書・図面・典籍(以下、古文書類とよぶ)から、214件に及ぶ新出資料が発見されました。これによって、既に知られていた長浜市指定文化財「国友一貫斉文書」684件と合わせて、新たな分類を立て目録作成を行ないました。
新出分を含めた藤兵衛(一貫斎)家の古文書類は、国友鉄砲鍛冶の歴史と生産体制を知る基本資料であるとともに、一貫斎の鉄砲製作や機器考案の実態を示す資料群で、日本の近世科学技術史の解明の上には欠くべからざるものです。科学者であり技術者でもあった一貫斎自らが保存し、その子孫が後世へ大切に伝えた意味も大きいと言えるでしょう。
器物調査によって以下の半製品・加工途中品・製作道具などが新たに発見されました。大まかに分類すると以下のとおり7類型に分けられます。目録はすでに知られていた反射望遠鏡(長浜市指定文化財)と合わせて作成しました。
これらの器物資料は、一貫斎が反射望遠鏡の製作過程において、試行錯誤を重ね、製作道具を工夫しながら、日本初の反射望遠鏡を完成させたことが分かる貴重な資料です。江戸時代の科学技術史上、エレキテルや櫓時計・からくり人形などの完成品が残ることはありますが、その加工途中品・半製品や製作道具が残ることは稀であり、重要な発見と言えるでしょう。
本WEBサイト内の「国友藤兵衛(一貫斎)家資料目録」をご覧ください。
本WEBサイト内の「国友藤兵衛(一貫斎)家資料目録」に掲載された資料について、研究目的に限り写真資料のご使用が可能です。申請については「写真資料の提供について」をご覧ください。
国友一貫斎の生い立ちからその経歴を紹介しています。
年表を通じて国友一貫斎の生涯を紹介します。
長浜市(事務局:長浜市 市民協働部 歴史遺産課)が、令和元年度からの2ヶ年計画で行なっている事業です。
現在整理・調査が行なわれている「国友一貫斎家資料」について、最新の資料目録を公開します。
国友一貫斎が好奇心と知識で生み出した数々の発明品について紹介します。
「国友藤兵衛(一貫斎)家資料目録」に掲載した資料について、研究目的に限り写真資料のご使用が可能です。
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